和食の基本
新潟のマナースクールマナクル講師の前山豊子です。
突然ですが、あなたは日本人ですか?日本人であれば、ご飯を食べることが多いと思います。もちろん、「主食はパンです」とおっしゃる方もいらっしゃることでしょうし、美味しいパンもたくさんありますね。
今回は、日本人なら知っておいていただきたい”和食の基本”についてお話してみたいと思います。
ご飯茶わんは右側?左側?
食卓にご飯、味噌汁を並べる時にご飯はどちらに置きますか?
つい先日目にした雑誌の中に、食事を提供しているお店の紹介があり、美味しそうなランチセットの写真がありました。
その写真を見たとき、何とも気持ち悪い印象で何が引っ掛かるのだろう?と考えました。すると、ご飯と味噌汁の位置が逆になっていたのに気がつきました。
あなたは、ご飯茶わんをどちらに置きますか?そしてその理由も言えるでしょうか?
正解は、ご飯は左側に置きます。
お味噌汁が右側。
いかがでしたか?正解できましたか?意識したことがなかった方も、この機会にぜひ覚えていただきたいです。それでは、なぜ?ご飯が左側に置くのか、について学んでみましょう。
ご飯を左側に置く理由は?
日本の文化ともいえる「和食」。この和食には私たち日本人が大切にしてきた「見えないものへの敬い」しきたりが大きく関係しています。
日本人は昔から、ご飯茶わんを左に、汁椀を右に配膳してきました。これを反対にしてしまうと礼儀に反すると、幼い頃から厳しくしつけられたものです。
では、なぜご飯を左に、汁物を右にするのでしょう。
日本は瑞穂の国。日本人にとってお米(ご飯)は、生きていく為の大切な格別な主食です。
稲は神様から賜ったありがたいものであり、また、神様の依り代にもなる尊いもの。
今でこそ機械化が進み、生産は楽になったとはいえ、もともと米を作るには八十八の工程が必要だったのです。「米」という漢字も「八十八」からできたとも言われているほど、とても貴重な食べ物なのです。日本人にとって命に直結する食べ物といっても過言ではないでしょう。
左、右を決めるのには、「陰陽説」が関わっています。
日本の”ならわし”にはこの陰陽、五行から見たものがたくさんあるので、また次の機会にお話ししたいと思います。
陰陽説では、左を「陽」で尊いとみなし、右を「陰」で卑しいとみなします。
その視点から、ご飯(米)を左に、汁ものを右に並べるのは理にかなっているといえるでしょう。
実際の配膳でも、汁やお茶、お水などの液体は右側に配膳されます。人間行動の手の機能や合理性を考えた上のことかもしれませんが、陰陽説の考え方と同じ配置になっているのも面白いですね。
誰も教えてくれない時代
日本は世界中みてもおそらく一番精神性の高い国だと私は思います。戦前、当たり前にあった「見えないものへの敬い」は戦後「物質的価値観」が主流となり、食べる事、食べられることに感謝したり、お水一杯でもいただけることがどれだけ奇跡的なことかを忘れてしまいました。どのお米がいい!お水はこれ!選べるほど人々に暮らしは豊かになりました。
それとは反対に、人々の心の豊かさは失わていったように感じます。
親や祖父母と暮らさなくなったので、昔からの教えは途絶えました。
昔は大人になるまでに、何かしら目上の人から教えられた時代でした。ですが、今は、習いに行かなければ恥ずかしいことだということすら気づけないまま大人になります。
多くの方が目にする情報雑誌で、ご飯とお味噌汁の位置の違いに、発売されるまでの過程の中で誰ひとりその違和感に気づく人がいなかった現実に、私はショックを受けています。
この国はどこに向かっているのでしょうか?
大げさだと思われるかもしれませんが、この出来事を見ただけで日本という国が消えてしまうだろうと思わざるを得ません。
日本の文化は、日本人の生きてきた歩みであり日本を守る結界。
自由と暮らしやすさの影で、私たちは大切なことを捨ててきたのではないでしょうか。
次の世界をつくる子どもたちに、大切な日本文化を伝えましょう。
ご飯、お味噌汁、箸の置く位置。「いただきます」「ごちそうさま」に込められた感謝の心など、日本人がこれまで大切にしてきた思い、文化を大切に伝え、残していきたいものです。
新潟のマナースクールマナクル
なでしこ和美人越後 代表 前山豊子